
男性更年期外来
男性更年期外来
病気の定義と総論
テストステロンは簡単に言って『元気の源ホルモン』のような感覚で理解をいただければわかりやすいかと思います。内分泌関係のメカニズムは非常に煩雑なためここでは詳細は割愛し、概要をメインに説明しようとおもいます。
性腺機能低下症(Hypogonadism)のうち,主として加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群を加齢男性性腺機能低下(late-onset hypogonadism:LOH)症候群と呼んでおり、病態についてもテストステロン低下に伴う多臓器機能障害と理解されています。LOH 症候群の症状としては,全身倦怠感,性欲低下,筋力低下,ED,集中力低下,不眠,いらいら,早朝勃起の減少など多岐にわたることがお分かりいただけるかと思います。また,加齢男性でのテストステロン減少が,抑うつ状態,性機能低下,認知機能の低下,骨粗鬆症,心血管疾患,内臓脂肪の増加,インスリン抵抗性の悪化,総コレステロール値と lowdensity lipoprotein cholesterol(LDL)の上昇に関連し,心血管系疾患,糖尿病などの危険因子になる とも言われています。血中レベルにおいて,遊離テストステロン(free testosterone:FT)は総テストステロン(total testosterone:TT)の 1 ~ 2% を占め,精巣で産生されたテストステロンが他の組織で作用すると考えられています。男性では,精巣ライディッヒ細胞より分泌されるテストステロンは加齢に伴って低下し,また GnRH 分泌量の減少によってもテストステロンは低下すると考えられています。また,併存疾患や肥満などに伴う視床下部 – 下垂体 – 精巣系の抑制を介して,続発性や機能性のテストステロン低下が認められる。その一方で,加齢に伴うテストステロン低下の程度には個人差を認める場合が少なくないといわれております。なんとなく調子が悪いけれどもなぜだかわからない、、、という方の中に一定数個の病態に該当される方がいます。
疫学
本邦と諸外国では性腺機能低下症の診断基準は異なっており,国際的には血中のTT 値が 300 ~ 350ng/dL を治療介入の基準値としています。一方,本邦で実施され
た 20 歳から 77 歳の男性 1,172 例を対象とした調査をもとに,加齢とともに減少する遊離テストステロン(free testosterone:FT)値を診断基準に用いており,FT 値が 8.5
~ 11.8pg/mL を境界域,8.5pg/mL 未満を治療介入の基準値としているます。この基準から判断すると,40 歳代の約 10%,50 歳代の約 20%,60 歳代の約 50% が FT
値の境界領域以下でありました。その後に行われた疫学調査においても同様の傾向が認められ,日本人では加齢とともに FT 値は有意に低下していたことが示唆されています。よって潜在的にかなりの人数が含まれることになります。
1. 主な症状
男性更年期障害の症状は多岐にわたり、以下のように分類されます:
✅ 身体的症状
✅ 精神的症状
✅ 性機能症状
診断基準
診断は主に以下の3要素を評価します:
✅症状評価
✅血液検査
血清遊離テストステロン(FT)値 8.5 pg/mL未満が低下の目安 LH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)の測定
他疾患の除外甲状腺機能低下症、うつ病、代謝疾患など他の病気を除外
✅治療法
① テストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)
※基本的にホルモン補充療法は医師が必要と判断した場合に行います。前立腺癌、またその疑いがある方にはテストステロン補充療法は行うことができません。また、ホルモン補充療法は保険診療適応外のため自費診療でのお取り扱いとなります。また副作用マネジメントの観点から定期的に採血による客観的評価を行い、補充が妥当かどうかと投与中の安全に関して判断します。主に起こる多血(赤血球の増加)が顕著な場合は一時補充を中断、または方法の見直しを行います
② 生活習慣の改善
③ その他の治療
✅テストステロン補充療法のリスク
日本の診療ガイドラインのポイント
✅まとめ
男性更年期障害は加齢に伴うホルモン低下に起因し、身体・精神・性機能に幅広い影響を及ぼします。日本のガイドラインでは、テストステロン補充療法を中心に、生活習慣改善や精神的ケアを組み合わせた総合的なアプローチを推奨しています。当院はこのガイドラインと欧州のガイドラインを参照し個人にあったアプローチを検討してゆきます